浅間高原の蝶


 浅間山南麓、軽井沢は古くから別荘地として開け、内外人の学者や、知識人が訪れる機会が多かったので、昆虫類の調査も先進していました。このためアサマモンキチョウ(ミヤマモンキチョウ)、アサマイチモンジ、アサマシジミなど浅間山にちなんだ名前が付けられている蝶も居ります。
 標高2569mの浅間山は、追分ヶ原、六里ヶ原、姥ヶ原、など高原状の裾野が広く、篭の登山、湯の丸山と、2000m級の山々を連ね、動植物の絶好の繁殖地として自然の豊かさを育んできました。
 浅間山の春の目覚めは遅く、5月始め残雪の間から草木の芽が見え始めるころに、蝶の活動が始まる。冬の間雪の下で越冬をしていたクジャクチョウ、キベリタテハ、テングチョウ、ヤマキチョウなどが暖かい日和日に日向ボッコをしている蝶を見ると春らしさが感じられます。その頃、ミヤマセセリ、青色に輝く、コツバメが林道の路傍などで、落ち葉の上を飛び交い、春の訪れを知らせてくれます。
 6月の声を聞くころ、追分ヶ原、北軽井沢、鹿沢高原などの草原には、ツマキチョウや、氷河期の遺物とも言われているウスバシロチョウが、ゆるやかに飛ぶ姿を観察され、アサマシジミ、ミヤマシジミ、ホシミスジなどを観察されるのも、此のころからで、ヤマキチョウ、テングチョウ、シータテハ、キベリタテハなど、永い冬を成虫で越した蝶の産卵の季節も終了し、次世代へと移り変わり夏を迎えます。
 浅間連山の森林限界以上の草原にはミヤマモンキチョウ(アサマモンキチョウ)、ミヤマシロチョウの高山蝶が、高原帯の草原には、コヒョウモン、コヒョウモンモドキなど、ヒョウモンチョウ類、フタスジチョウが多くなります。かつて、高原地帯に多産したオオウラギンヒョウモン、ヒョウモンモドキ、オオルリシジミ、ヒメヒカゲなどが近年姿が
見られなくなって来ているのは淋しいことです。
 8月、秋風を感じるようになると蝶の種類も少なくなり、産卵に忙しく飛び廻るヒョウモン類や、ジャノメチョウ類が目立つようになります。高山蝶のベニヒカゲも最盛期は此のころです。浅間園の自然研究路を歩いていると多く見られるのが、キベリタテハ、エルタテハ、クジャクチョウ、コムラサキで、アサギマダラの優美な姿が数多く観察されるのも此のころです。
 9月に入ると、草花も少なくなり、北軽井沢高原のアザミなどの花にヤマキチョウ、ホシミスジ、ヒョウモン類や、セセリ類が最後の夏を楽しんで居るかに見えます。
 やがて浅間高原の木々の葉が色付き秋も終わりに近づくころ、浅間山頂が雪で淡く白くなる頃には、浅間山周辺の昆虫世界も寒い冬を迎える準備も終了し、種類それぞれに成虫、卵、幼虫、蛹態で積もる雪の銀世界の中、春までの永い越冬の眠りに入ります。

ウスバシロチョウ
北軽井沢、追分ヶ原など浅間山麓で、5月頃山間の草原をゆるやかに飛ぶのを見られます。
ミヤマカラスアゲハ
5月末頃と7・8月頃渓谷や林道などで花に求密しているのを観察されます。
ヒメギフチョウ
浅間山付近では珍しい蝶で、早春山麓で外の蝶に先駆けて発生します。群馬県指定天然記念物。
ミヤマシロチョウ
群馬・長野両県の指定天然記念物。7月湯の丸高原で、登山道や、渓畔などでゆるやかに飛ぶのを観察されます。
ミヤマモンキチョウ
群馬・長野両県の指定天然記念物、湯ノ平高原から浅間連山の鞍部で観察されます。
ヤマキチョウ
群馬・長野両県を主とする中部地方だけに生息する蝶で、浅間高原には多産します。
クロミドリシジミ
浅間連山南麓高原地帯のクヌギ林で、6月頃観察されます。
アサマシジミ
北軽井沢、追分ヶ原など高原の蝶で、6月頃林縁などで観察されます。
ミヤマシジミ
アサマシジミに似ているが、食草コマツナギの自生する処から離れません。
カラスシジミ
渓谷沿いの林縁で6月頃から観察されます。
トラフシジミ
春型は5月、夏型は7月に浅間高原各所で観察されます。
テングチョウ
6月下旬頃渓谷沿いの路上などに大群で吸水に集まる姿を観察されます。
ウラギンスジヒョウモン
7・8月浅間高原で最も普通に見られる蝶です。
ウラギンヒョウモン
7・8月浅間高原でよく観察される蝶です。
アサマイチモンジ
あまり標高の高い処には生息していない。林縁などに見られます。
フタスジチョウ
北軽井沢、鹿沢高原などの疎林のある草原で多く見られます。
クジャクチョウ
7月頃から観察され8・9月頃が数多い。浅間園内でも見られます。
キベリタテハ
8月頃から北軽井沢、鹿沢高原などの森林や谷間の開けた場所に姿を現す亜高山帯の蝶で、浅間自然研究路コースでも観察されます。
ベニヒカゲ
湯の平、鹿沢高原、湯の丸山に多産し、小浅間山でも数が少ないながら見られます。群馬・長野両県指定天然記念物。
ヒメヒカゲ
南面の追分ヶ原湿地草原で観察されます。北面草原では珍しい蝶です。
クロヒカゲ
林の中や、木の茂った登山道で観察され、樹液にも集まります。
ミヤマセセリ
春、他の蝶に先駆けて発生、ミズナラ林や登山道に多く観察されます。
チャマダラセセリ
浅間山付近では珍しい蝶の仲間で、キジムシロの花に好んで求密します。
チャバネセセリ
北軽井沢、追分ヶ原の林道の崖や林縁の花に訪れます。

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